パナソニック コネクト株式会社の営業大解剖 〜大手企業の営業プロセス設計の秘訣〜 後編


日本企業の営業生産性は、グローバルと比較して低い水準にあります。その中で、営業生産性向上に向けて、多くの企業がさまざまな取り組みを行っています。

しかし、CRM/SFAなどの顧客管理システムの運用・定着や営業組織マネジメントなどに取り組んではいるものの、障壁が多く、苦戦している方も多いのではないでしょうか。

そこで本セミナーでは、営業DXに関してさまざまな取り組みを行っているパナソニック コネクト社より、目指している営業組織の実現に向けた具体的な取り組みを伺いました。

「顧客別戦略の明確化」「営業プロセス改革」「業務プロセス改革」「マネジメントプロセス改革」の4つの柱を中心にご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

■イベント実施日
2023年6月9日(金)

■スピーカー
パナソニック コネクト株式会社
現場ソリューションカンパニー CX推進部 シニアマネジャー
左近 次朗氏

2003年に入社し民需・公共案件のエンジニアとして現場を7年間経験。その後は、経営企画・地域支社の企画を経て、2019年より法人営業部門担当時に営業プロセス改革に携わりSFAの設計導入を行う。SFA定着化とともにSFA/Tableauダッシュボードを活用したマネジメントプロセスを実装。法人営業部門において一定の定着化を果たしたのち、2022年より現組織を担当し全社への展開に着手。

株式会社ナレッジワーク
フィールドセールス
吉村 由宇

2005年 京都大学経済学部卒業。
2005年 東京海上日動火災保険株式会社入社。大手法人営業に9年、人事職に4年間従事。
2018年 VISITS Technologies株式会社入社。大手法人営業職に4年間従事。
2022年 株式会社ナレッジワーク入社。フィールドセールス職に従事。

目次[非表示]

  1. 1.経営層を巻き込み、アカウントプランの進捗を確認
  2. 2.SFAを定着させるためのマネジメントプロセス改革
  3. 3.現場を「管理」するのではなく「支援」を
  4. 4.インサイドセールスによって、営業の仕事をフォーカス
  5. 5.営業変革の中心に顧客をおく
  6. 6.まとめ:パナソニック コネクト社の営業プロセスを参考に自社のプロセスの見直しを



経営層を巻き込み、アカウントプランの進捗を確認


ナレッジワーク 吉村:パナソニック コネクト様の各取り組みの詳細をお伺いできればと思います。すべてを今回のイベント内で取り上げることは難しいので、いくつかに絞って、まずは「顧客別戦略の明確化」について教えてください。

パナソニック コネクト 左近氏:そもそもパナソニック コネクトが提供するソリューションが、お客様の経営に貢献できないのであれば意味がありません。
 
したがって、私たちのソリューションでお客様の経営に本当に貢献できるお客様を定め、そのお客様に対し、どのような価値をどのように提供していくのかをプランニングします。このプランを弊社では「アカウントプラン」と呼んでいます。

 
このアカウントプランというのは、現場のメンバーが自身の活動を管理するツールであると同時に、お客様との理解を深めるためのツールでもあります。
 
そして、弊社では「アカウントプランセッション」を実施しています。これには社長や営業以外の職能のトップも参加し、お客様の課題に対しどのような価値提供を進めていくのか、そのプランを説明し合意を取るというステップを踏んでいます。

それによってお客様に対してどんな価値をどのように提供するかの目線を職能横断で合わせることができます。アカウントプランの進捗管理としては、キーパーソンカバレッジの目標をセットするというのはとくに大事にしているところですね。
 
ちなみに、こちらは経営層で見ているダッシュボードです(下図)。アカウントプランセッションで合意した、各カンパニー社長が担当しているキーパーソンカバレッジを表示しています。このキーパーソンカバレッジの目標達成に向けたアクションができていないと、アラートが出るようになっています。


ナレッジワーク 吉村:なるほど。1つずつアクションを積み重ねていくのを経営層含めて徹底しているのが素晴らしいですね。通常、各カンパニーの社長クラスがSFAのダッシュボードをご覧になっているというのはあまり聞かないのですが、経営層の方々の巻き込み方についてポイントを教えていただけますか?
 
パナソニック コネクト 左近氏:最初に法人営業の少し小さめの領域でしっかりとやり抜き、成果を出したというのが大きかったですね。この成果が他の本部にも伝わり、徐々に展開していくことができました。
 
しかし、これにはかなりの時間がかかっています。SFAを導入したのは2020年で、そこから3年間地道にやってきて、今があるという感じですね。
 
ナレッジワーク 吉村:最初に小さく成果を出して、そこから地道に時間をかけて広げていくということですね。ありがとうございます。

SFAを定着させるためのマネジメントプロセス改革

ナレッジワーク 吉村:それでは、営業プロセス改革の2つ目の取り組み「マネジメントプロセス改革」についても教えてください。
 
パナソニック コネクト 左近氏:4つの柱のなかでも、一番重要なのが「マネジメントプロセス改革」だと思っています。何度もお話ししていますが、SFAを導入するだけでは、それがアクションにつながらなければ意味がなく、マネジメントのプロセスに組み込みアクションにつなげていかねばなりません。
 
そのために大事なのが、まずは可視化すること。そして、その可視化したものをマネジメントプロセスに組み込むことが非常に重要だと思っています。
 
とくに、社員が多い会社や、多くのビジネスを展開している会社では、階層や部署、職種でそれぞれが見る情報が異なることが多々あります。そうではなく、皆が同じ情報をそれぞれの階層の粒度で可視化し、実績・進捗・アラートなどと結びつけることが大事です。
 
ダッシュボードができたらさらに、どの会議体でその情報を確認するのかを決めることが重要です。

私たちの会社でもこれが徹底できている部門とできていない部門がありますが、徹底できている部門では、毎月の会議でデータを確認するのは5分で終わります。
 
残りの時間で重要な案件や次にどのようなアクションを取るべきか、中期計画などの話をする時間にあてています。これは大きな変化だと感じていますし、このような取り組みを全社に早く広めていく必要があると考えています。
 
ナレッジワーク 吉村:ありがとうございます。それは素晴らしいですね。会議でのお話も、営業の現場でよくあることですが、上層部が出てくる会議では数字の確認に大半の時間が使われ、次にどうするかという部分が流れてしまうことが多いですよね。それが改善されているのは、本当に素晴らしいことだと思います。
 
そもそもの話ですが、皆が同じ情報を見るためにはデータがきちんと入力されていることが大事です。しかし、SFAを導入してもきちんと入力してくれない、というのは非常によく聞く問題です。私自身、よくお客様からお話を伺うなかで、SFAの入力がなされないという問題に出くわします。そういった問題はどのように乗り越えられたのでしょうか?

パナソニック コネクト 左近氏:その問題については、われわれも同じように悩みつつではありますが、実践していることをお伝えしますね。

弊社では、パソコンなどの代表的な商品を効率的に販売する営業パーソンもいれば、お客様の基幹システムに深く関与し、ソリューションサービスを提供する営業パーソンもいます。そのため、全員が同じ方法でSFAを利用するわけではないと考えています。
 
その前提を踏まえつつ、各部署でカスタマイズをしていく形になります。基本的な考えとしては、中期計画などの目標数字が設定されたとき、現場のメンバーには「この数字を達成するためにどのような活動をすべきか」を考えてもらうことを重要視しています。そして、それをダッシュボードに反映し、それをもとに業務を進めるというマネジメントプロセスを確立することが、SFAへの登録を促すきっかけとなります。
 
また、このプロセスを全社に広めるために、1年間の活動を競うコンテストを開催し、優秀な成果を上げた者には賞品を贈呈するなどの取り組みも行っています。
 
とくに、SFAにデータを蓄積することを習慣化し、それを使って自分たちの活動を常に確認するというプロセスを導入したことは、われわれにとって大きな転換点でした。

現場を「管理」するのではなく「支援」を

ナレッジワーク 吉村:なるほど、ありがとうございます。本日は、実際に皆さんが使用しているダッシュボードも見せていただけるとのことですが、その詳細について教えていただけますか?
 
パナソニック コネクト 左近氏:はい。各階層で見るダッシュボードは分けているので、それぞれご説明します。基幹システムの情報とSFAの情報をかけ合わせて、マネジメントダッシュボードを構築しています。ダッシュボードのライセンスはマネージャー以上の責任者に付与しています。
 
1つ目のダッシュボードでは、当年度の受注・販売に関する進捗を可視化しています。現状の立ち位置を把握するとともに、過去と比較して遅れているのかそうでないのかなど、現状の立ち位置を把握するダッシュボードになっています。

2つ目のダッシュボードでは、当年度の目標達成に向けてパイプラインを可視化し、目標達成に向けたターゲット商談を定めたり、計画達成に向けたキーとなる商談を可視化したりしています。

 
最後の3つ目は、足元の業績だけでなく翌年度以降のパイプラインを可視化し、先を見据えたアクションを促すダッシュボードになっています。

 
ナレッジワーク 吉村:ありがとうございます。プロセスに組み込むだけでなく、そのプロセスのなかで自分がどのように対応すべきかを理解し、それが自分の案件を進めるためのきっかけにつながるという点が重要なのかなと感じました。
 
パナソニック コネクト 左近氏:その通りですね。私たちは「管理」をしたいのではなく、「支援」をするためにSFAなどのツールを導入しています。これらのダッシュボードやそのもととなるデータは、あくまで管理ではなく支援のために使う、ということを第一におかねばならないと思っています。

インサイドセールスによって、営業の仕事をフォーカス

ナレッジワーク 吉村:それでは3つ目の取り組み、業務の役割分担設計について教えてください。

パナソニック コネクト 左近氏:はい、ここはまだまだ課題が多いところです。われわれの会社だけでなく、多くの企業で営業担当者はお客様に価値を提供したいという強い思いから、すべてを自分でやろうとする傾向があります。その結果、生産性が低下するという問題が生じています。
 
その解決策として、われわれはインサイドセールスの導入に取り組んでいます。とくにハードウェアの販売については、営業の手間を減らす仕組みを構築中です。また、社内業務の一部、たとえばお客様からの注文書やパートナーへの発注などの業務を統一し、標準化を図っています。
 
ナレッジワーク 吉村:ありがとうございます。営業担当者がすべてをこなすというのではなく、役割分担を通じて、営業が本当に価値を出せる領域にフォーカスするという取り組みをされているのですね。それが重要なポイントだと感じました。

営業変革の中心に顧客をおく

ナレッジワーク 吉村:そして最後ですね。4つ目の取り組みとして、左近さんご自身が所属されているCX推進部の活動についても、ぜひ教えていただければと思います。
 
パナソニック コネクト 左近氏:営業の観点からお客様の価値提供を最大化するためには、顧客接点を持つすべての職能がお客様に向き合い、その接点で得た情報をデータ化し、活用することで営業がより強く前進する環境を整えることが大切です。私たちのチームではそのサポートをしたいと考えています。

実は、以前は営業革新部という名前で、その主な目的はSFAを営業に導入し、各方面に展開することでした。しかし、われわれは“保守も含めた各職能が持つ顧客接点情報をもとに顧客提供価値の最大化を図っていくんだ“という想いから、部署名をCX推進部に変更したという経緯があります。
 
これにはCX(Customer Experience:お客様体験)を中心に据え、各職能からの情報が集まり、一体となって動く世界をつくり上げたいという意味を込めています。
 
われわれのメンバーと共にこのビジョンを共有し、いろいろなサービスの導入や変化に対して抵抗はあるかもしれないが、それを乗り越えて実現させなければいけないという強い思いを持つことが大事だと思っています。
 
ナレッジワーク 吉村:左近さんのお話を伺って印象的だったのは、機能の分化が進むなかでも、全体をつなぐための相当な努力をされていることです。
 
そして、その全体をつなぐためのキーとなるのが、お客様に「コネクトに任せてよかった」と思っていただけるようにすること。その象徴が、CX推進部なんだと感じました。これからのパナソニック コネクト様の変革が楽しみです。ありがとうございました。

まとめ:パナソニック コネクト社の営業プロセスを参考に自社のプロセスの見直しを

今回は、営業DXに関して多くの取り組みをされているパナソニック コネクト社より、自社が目指している営業組織の実現に向けた具体的な取り組みを伺いました。

今後、営業組織の生産性を向上するためには、デジタルツールを活用した組織変革がこれまで以上に重要になってくると考えられています。

そして、営業DXを実現するためには「営業ナレッジ」のデジタル化も欠かせません。そのなかでも「ナレッジワーク」というツールでは、営業力強化に必要なさまざまな要素を、1つのツールで体系的に実現できるため、営業活動の効率化や営業成果の向上が期待できます。

「営業DXに何から取り組んでよいのかわからない」とお悩みの企業様は、3分でナレッジワークでできることがわかる資料をご用意しておりますので、一度確認してみてください。

ナレッジワーク 編集部
ナレッジワーク 編集部
セールスイネーブルメントや営業DX、営業生産性の向上に関するコンテンツを発信しています。弊社のナレッジやイベントレポートを通して、日本の営業組織変革のお役立ちできる情報をお届けします。

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